前回に引き続き、雨森たきび:著『負けヒロインが多すぎる!』(ガガガ文庫)2巻の感想をお届けします。
ネタばれも含みますので、どちらかというと既読者向けの記事になります。
あらすじ
夏休み後半。
たまたま喫茶店でだべっていた温水と八奈見は、焼塩と、その思い人である綾野が2人きりで会っているのを目撃する。さらには、2人を尾行する綾野のカノジョ――“勝ちヒロイン”朝雲千早とも遭遇。
「私は光希さんと焼塩さんの浮気を疑っています」
巻きこまれた温水と八奈見は、朝雲とともに真相を探ることに。
焼塩にかぎってそんなことはと思う。
雨森たきび『負けヒロインが多すぎる!』2巻裏表紙より
でも、2人きりのときの、あの想いがにじんだ顔は――。
今巻のメイン登場人物
焼塩檸檬(やきしお れもん)
ツワブキ高校1年生。
日焼けしたスラリとした体系の美少女。無邪気で誰とでもすぐに距離を詰めて仲良くなれる。
初恋の相手・綾野光希にアピールしたが、超鈍感な彼には伝わらず、結果的に主要負けヒロインの一人となった。
陸上部に所属しており、走ることに関しては女子ではどの種目でも一番。
しかし全国レベルでは通用しないと自覚している。
ツワブキにはスポーツ推薦で入学しており、赤点と補修の常連。
成績は下の下。
羞恥心があまりなく、「大事なところさえ見えてなければOK」という感じ。
作中や販促物でエロ要員として使われている印象がある。
綾野光希(あやの みつき)
焼塩の思い人。小学校からの付き合いで、幼馴染と言える。
眼鏡をかけた爽やかなイケメン。
超鈍感であり、そのため配慮に欠けるところがある。早合点して突っ走ったりもする。
その反面、彼女の朝雲さんの「悪さ」に気付いているふしもある。
温水とは中学で同じ塾だった縁で話すようになった。
温水に対して謎の信頼と高評価を寄せている。
今も塾に通い続けている。
成績は上の上。
朝雲千早(あさぐも ちはや)
焼塩に対する勝ちヒロイン。綾野の彼女。
綾野とは同じ塾であり、そのため温水も存在を知っていた。
小柄でストレートのロングヘア、くりくりした目、光るオデコが特徴の美少女。
記憶力お化けで、一度見たものは覚えてしまい、即座に分析して行動する才女。
半面ポンコツな部分も多く、変装、ごまかす能力は絶望的である。
目的のためならイリーガルな手段も辞さない漆黒の意思を持っている。
成績は上の上。学年首位を取ることもある。
感想
焼塩
1巻で何もできずに失恋した焼塩。何もなかったことにしようと思いますが、隠し通せるほどの器用さは彼女にはありません。
結局は焼塩には朝雲さんや綾野と向き合って「決着」をつける必要があったので、バレて良かったのでしょう。
可愛く見られたいと思った
それだけで罪悪感に苦しむ彼女は、どこまでも純粋ないい子です。
朝雲さんとも、綾野とも直接話をするという決断は、とても彼女らしいと思います。
焼塩から綾野への「わがまま」。
その内容が何だったのかは気になりますが、それを描くのは無粋というもの。
とてもきれいな「決着」でした。
八奈見
1巻で友達になった温水と八奈見。
温水は初めての友達を大事にするのかと思ったら、いたって塩対応です。八奈見だしね。
1巻よりも八奈見のお父さんのヤバさが際立ちます。
ブラックというか、イリーガルな会社です。
大量の素麺はご近所づきあいも、人間関係も、八奈見の体形も破壊するようです。
焼塩のおばあちゃんの家での夜、八奈見は温水にどんな表情を見せたのでしょうか?
温水は八奈見にいい子でいて欲しいですが、残念ながらそれは温水のエゴです。
ひたすらいい子の焼塩と違い、多面性を持っているのが八奈見の魅力だと思います。
2巻では八奈見はまだまだ失恋を吹っ切ることができていません。
温水
綾野は温水に
「どうして焼塩のためにそこまで献身的になれるんだ?」
というようなことを聞きます。
温水と焼塩の関係は、同じ中学出身で、クラスメイトで、同じ文芸部。
焼塩はともかく、温水はこの時点で焼塩を友達とは認識していません。
でも、私は読んでいて温水の行動に違和感を感じませんでした。
温水はその時その時の状況の中で、良いと思えること、必要と思えることをやっていただけなのでしょう。
そこにはあまり欲が絡んでいません。そこが温水の特異なところなのだと思います。
3巻で小抜先生が温水を「不思議な子」と評していますが、そういう部分を言っているのでしょう。
言葉で確認すること、話して相手を知ること
温水が「友達であることの意思確認をしていないから、まだ友達じゃない」というようなことを言います。
温水の言うことはズレているのかもしれませんが、綾野が納得した通り、確認してみないとわからないことは多いものです。
温水が話したこともない朝雲さんのイメージを勝手に作り上げていたことに気づいたり、焼塩が話をして朝雲さんを知ろうとしたり。
今巻は、「話してみなければわからないことがある。話をすることで相手を知れる、分かり合える」というのがテーマだったのかなと思いました。
2巻で一番面白かった箇所
温水「え、俺たち友達なんだ」
気になったことを箇条書き
- 雨森先生が4連リボンを作中に取り込んだ。
- 志喜屋さんにペットボトルの水を飲ませたい。
- 「強引にグイグイ来られると、断れない」小鞠は、確かにエロい。
- 解かれていく温水への誤解。ただし内容は謎。
- 「そういうとこ」「そーゆーとこ」、何度も本作で温水が言われる言葉。でも、いろいろな意味が込められている。それが面白い。
今巻の豊橋要素
今巻で出てきた豊橋関連のものを取り上げます。
焼塩のおばあちゃんのいる新城市は、私が詳しくないので割愛します。
精文館書店本店
豊橋駅前通り沿いにある老舗書店です。品ぞろえが充実した大きな本屋です。漫画や同人誌もたくさん扱っています。
『マケイン』や『だも豊』のサイン本を入手できる確率が一番高い場所でしょう。
私が豊橋に住んでいた20年以上前から変わらずあります。あの頃もずいぶんお世話になりました。
ブラックサンダー
豊橋のお菓子メーカーが作った、世界に誇るチョコレート菓子です。
一時期中国人に爆買いされていましたが、今はどうなのでしょうか?
三河弁のゴンちゃん
三河弁の強い佳樹の親友です。方言女子は可愛いですね。
『だも豊』のちぎり先輩を思い出します。
西駅は人がいない
豊橋駅西口のことを、地元の人は「西駅」と言います。新幹線のホームのある方向です。
昼間は確かに人が少ないです。
飲み屋は結構あるので、夜になれば人も増えると思います。
最後に
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
『負けヒロインが多すぎる!』は豊橋(三河地方)を舞台にした作品です。豊橋の風景やグルメがたくさん登場します。
実在する場所や施設が多いので、聖地巡礼にぴったりです。
豊橋は新幹線で東京から約2時間、名古屋から約20分で行けます。
歴史的建造物やB級グルメ、映画やドラマのロケ地など、見どころがいっぱいです。
本作のファンなら、ぜひ豊橋に行ってみてください。楽しい旅になると思います。
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